英国の一部の大学でTOEFLのスコアを受け付けなくなりました
英国のTOEIC試験会場で、試験監督が受験者の前で正解を読み上げたり、Speaking・Writing試験では受験者の替え玉が回答するなどの不正行為が行われていたことが、BBCのドキュメンタリーで暴かれました。
数日前に日本でもニュースになったこの事件をご存知の方も多いとは思いますが、TOEFLにも影響する事態となりました。
まず、事態の流れを時系列でお伝えします。
今年の2月、BBCのテレビ番組で、英国の移住コンサルタント会社が英語がまったくできない学生でもTOEIC試験で高得点を取らせる手段や、不正な銀行残高証明書を販売していたことを報道しました。
テレビ番組の大まかな概要、実際にどのように不正行為がなされていたのかは以下から確認できます。
Student visa system fraud exposed in BBC investigation
英国の内務省(Home Office)からの試験停止のリクエストを受け、TOEFL・TOEIC試験を開発・運営しているETS(Educational Testing Service)はTOEFLに関して以下の発表を行いました。
Update on TOEFL® Testing in the U.K. (2014年4月17日)
Update on TOEFL® Testing in the U.K.
Following the broadcast of a BBC Panorama program in February 2014 which highlighted an organized criminal element seeking to circumvent the U.K.’s visa-granting process, ETS has made the decision not to extend our Secure English-language Testing (SELT) license with the Home Office. As a result, TOEIC® and TOEFL iBT® testing will no longer be offered for U.K. visa-granting purposes.
We appreciate the Home Office’s recognition that while the TOEFL and TOEIC tests shared a SELT license, the fraud uncovered by the BBC program was limited to TOEIC testing. Security measures around the TOEFL test were never under question. The TOEFL test remains the most widely respected English-language test in the world recognized by more than 9,000 institutions in more than 130 countries.
Security is and always has been a top priority; however, we’ve made this decision in response to the security challenges portrayed in the BBC program. We acknowledge that we fell short of our own high standards and sincerely regret the dishonest activities of third party contractors in the U.K. whose job it was to administer the TOEIC tests honestly and fairly. When applied properly, our global security protocols prevent and detect incidents of fraud. Going forward we will continue to implement additional, stricter, best-in-class security measures for our tests, including biometric voice analyses, to ensure our test scores remain the most trustworthy in the world.
Students seeking more information on test cancellation and refund policies related to U.K. visa testing should contact TOEFL Services at toefl@ets.org.
その後、CIEEJ(国際教育交換協議会 日本代表部)は以下のように発表しています。
【重要】英国ビザ申請要件の変更について(2014年4月23日)
この決定により、英国滞在ビザを取得する目的でTOEFL iBTテストのスコアを使用することはできなくなりますので、謹んでお知らせいたします。
これは、英国国内のTOEICテスト実施会場で不正があったために、ETSがテストの正当性を確保するために英国でとった措置です。また、TOEFL iBTテストスコアは、英国の大学などの教育機関への入学(アドミッション)申請には、従来と変わらず、引き続きご利用いただけます。
上記の出来事に関してメディアは以下のように報道しています。
朝日新聞
TOEICとTOEFL、英ビザ申請に使えず 4月から(2014年4月25日)
TOEICとTOEFLを運営する米国の非営利団体ETSは、英国で「下請け業者による違法行為」を確認し、英内務省と結んでいた、英語力証明に使うための契約を更新しないと今月17日に発表した。TOEFLも同じ契約に含まれており、ビザ申請には使えなくなった。同省も「英語力証明の根拠として、ETSが行うテストの受け入れを停止した」と発表した。
JAPAN TIMES
TOEIC, TOEFL axed as route to U.K. visa
The fraud, uncovered by “BBC Panorama,” a BBC program, was limited to the TOEIC, but since both the TOEFL and TOEIC tests share the SELT license regime, neither test will be used in the future, ETS said.
This means Japanese planning to study in Britain will have to take lesser known tests to obtain a visa.
ETS, a nonprofit organization, enforces and manages the two tests. It said in a statement released April 17 that it decided not to renew Britain’s Secure English-Language Testing (SELT) license. The SELT license can be used to prove English ability — one of the requirements for getting a visa to enter the U.K.
上記のCIEEJ、朝日新聞、JAPAN TIMESいずれも
留学生が英国滞在ビザを申請するためにTOEFL iBTのスコアを使用することができるなくなる
と報じています。ETSの発表では、その理由は
ETSが、TOEFL、TOEICを英語能力証明試験(SELT)として使用する英国の内務省(Home Office)とのライセンス契約を更新しないことにしたから。
そう、英国内務省に断られたのではありません。
(内務省から試験停止のリクエストを受け)ETSが自ら契約の更新をしないと決定したのです。
ちなみに上のETSが発表した文書には「ゴメンナサイ」「モウシワケナイ」的な表現は入っていません。
確かにETSが直接不正を行ったわけではありませんが、不正を行った業者を選定し、委託していた責任はあると思うのですが。
それに対して、この件に関しては何の責任もない、ETSの下請けになるCIEEは「多大なご迷惑をおかけすることになりましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪を述べています。
日米の文化の違いって面白いですね。
(または単に会社の文化の違いということかもしれませんが)
この決定により「英国滞在ビザを取得する目的でTOEFL iBTテストのスコアを使用することはできなくなった」のは上でお伝えしましたが、
CIEEJ(国際教育交換協議会 日本代表部)は
「TOEFL iBTテストスコアは、英国の大学などの教育機関への入学(アドミッション)申請には、従来と変わらず、引き続きご利用いただけます。」
と発表しています。
しかし、4月30日(水)現在、ウェブトフルの受講生の方々から、英国のいくつもの大学で入学申請にTOEFLが使えなくなっているとの報告をいただいています。
例えば、以下のケンブリッジ大学大学院では「TOEFLスコアを今後受け付けない」と発表しています。
University of Cambridge, Graduate Admissions, English Language Requirement for this course:
The Home Office has suspended accepting ETS tests as evidence of English language ability. This includes the Princeton TOEFL test (Test of English as a Foreign Language), and as a result the University of Cambridge will no longer be accepting TOEFL test scores as sufficient to meet the language entry requirements for Graduate study.
これに対して、英国のもう一つの雄であるオックスフォード大学は、今のところTOEFLのスコアを引き続き、受け付けるようです。
University of Oxford, Admissions, Application Basics
しかも、そのアップデートの中では
Update
For applicants who require a student visa
Please note that TOEFL tests undertaken in the UK only are not currently being accepted for visa applications made within the UK as proof of English language proficiency. This does not affect students who took, or who are taking, the TOEFL test overseas. Please see further details on the Visa and Immigration website.
「『英国内で』受験したTOEFLスコアは、現在ビザ出願に使えない。(しかし)これは海外でこれまで、またはこれからTOEFLを受験する学生に影響しない。」
と発表されています。
London School of Economics and Political Science では「TOEFL受け入れのポリシーに関しては現在検討中。できるだけ早くアップデートの予定。今後、受験する人はIELTSをお勧めする。」とのことです。
London School of Economics and Political Science, Latest News on ETS TOEFL Tests
Latest news on ETS TOEFL tests
You may have seen in the news recently that ETS, the test provider of the TOEFL English language test, has decided not to extend its SELT (Secure English Language Test) licence with the Home Office. This news is particularly relevant to offer holders who will require a Tier 4 visa for their studies at LSE. We understand that this may be a time of concern for you, particularly if you have already taken, or are planning to take, a TOEFL test for entry to a graduate programme at LSE. We would like to reassure you that we are aware of the issue, and will be in touch soon with a formal policy on the acceptance of TOEFL English tests, and advice on the next steps which you should take.
In the meantime, if you hold an offer with an English language condition, and have not yet booked a test appointment, we request that you book an IELTS test (not a TOEFL test).
If you already hold TOEFL results, or have already booked a TOEFL test date, please bear with us, and we will update you as soon as possible with the necessary course of action.
以下の日本の英国大使館の発表では
Educational Testing Service (ETS) について(2014年4月25日)
内務省は、取り決め終了前のTOEIC, TOEFLの結果を受け入れますか?
現在英国で学んでいる、ETSを通して英国外で取得したTOEFL, TOEICの証明書を持っている学生は、通常どおり学業を続けられます。 ETSの語学証明を持っている申請者は、精査のため、UKVIによるインタビューを受ける必要があります。
ETSを通じてTOEFL, TOEICの証明書を取得している学生で、まだビザの申請をしていない学生は、申請前にGov.UKのウエブサイトを確認するか、情報、指示を得るために大学に連絡をしてください。
いくつかの大学はETSテストの結果をもう受け付けていません。影響の及ぶこれらの学生にどのような指示をすればよいでしょうか。
内務省とサプライヤーの契約が終了した2014年4月5日後に、TOEFL, TOEICの証明をETSから取得した方々は、UKビザの申請方法に関する情報についてを参照してください。
しかしながら、どのテストを受け付けるかは大学の決定によります。
と説明されています。
英国の場合、大学側がTOEFLでの英語力の証明を認め、その出願者に合格を出したとしても、滞在のビザ獲得のための英語力証明の提出が必要なようですが、4月5日以前のスコアであれば、TOEFLでのビザ申請も可能なのかもしれません。
また、英国の大学に出願予定でTOEFLのスコアを使いたい人は、志望校のサイトを確認の上、必要であれば学校に確認の問い合わせをしましょう。
上記は、英国の大学・大学院への留学を予定している方のみに関わる問題であり、アメリカなど他の国への留学にTOEFLが必要という方には影響しません。
私を含めたウェブトフルのスタッフは留学手続きの専門家ではないので、この問題に関して確かなことは言えませんが、現時点で発表されているものをまとめました。
今後、英国の大学への出願とTOEFLに関して何か分かることがありましたら、またお伝えします。
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