【改訂版】英作文の訓練はTOEFL Writingのスコアアップに効果的?
以下、以前の記事を改訂したものです。
最近、受講されたばかりの方から、これまで取り組まれたTOEFL Writing対策として以下のような内容のご報告をいただきました。
(内容を維持しながらも、表現はかなり変えています)
英文を書く力を養成するために、これまで英作文の本に数冊取り組んだ。
長いエッセイを書くには、まず短い文が書ける必要があると考えたため。
その取り組みを通して英語力の向上は感じているものの、Writingのスコアは伸びず前と変わらなかった。
TOEFL対策、そして英語教育として興味深いトピックなので、今回はこのご報告をもとにTOEFL Writing対策としての「英作文の本」への取り組みについて書くことにします。
まず、いただいたご報告では「Wrtingのスコアは伸びなかった」ということですが「スコアが上がらなかったから、その学習法が良くない」とは言えません。
例えば、以前のWritingのスコアが評価点平均3で20だったとしましょう。そのときの評価は3でも下の方の3で、厳しめの採点官なら2になるくらいの出来だったかもしれない。それが取り組みによって3の上の方になった、人によっては4がもらえるくらいにWriting力が向上した、という可能性もあります。
また当然ながら試験問題は毎回異なり、今回は自分にとっては書きにくい問題だったのかもしれません。
1回限りの結果で「スコアが上がらなかったからその学習法は良くない」とは言い切れません。取り組みを行っている自分が、実際の問題に対してより書けるようになっているという感覚があるかが何よりも大切です。
しかしながら私は、英作文の本への取り組みによってTOEFL Writingのスコアが上がる可能性は低いと考えます。
その理由をこれから述べますが、話を進める前に「英作文の本」を定義しておきます。
1.ページの左側に日本語。ページの右側に英文が表示されている。
2.英文は、ある表現や構文、文法を身につけさせることを意図したもの。
3.並べられた文それぞれは、意味のつながりはなく、バラバラのもの。
もしピンとこなかったら、「英作文」というキーワードで画像検索してください。上記 3つに当てはまる本のページがいくつも見つかるはずです。
TOEFL対策として、このような英作文の本に取り組むのであれば、
Writingは20点(評価点平均3)「未満」の方が、
本格的なWriting対策の前の準備として、その取り組みを通してのスコアアップは期待せずに、
1-2ヶ月ほどの間、Listening・Reading対策と並行して
行うことをお勧めします。
英作文は日本語をもとに英文を作成することを求めるので、エッセイを書く際に日本語から考えて英語にしようとする癖を強化してしまう恐れがあります。日本語で考えた文を英文にしようとすると英語としては不自然な文になりがち。よってTOEFL対策として長い期間での英作文への取り組みはお勧めしません。
TOEFL Writing対策として英作文の本に取り組む方の多くは300語を超えるようなまとまった英文エッセイを書いたことがない、またはそのような経験がほとんどないからまずは1文ずつを書けるようにするトレーニングを行いたい、ということかと推測します。
しかしそこに時間をかけてもTOEFLでのエッセイに求められる展開の仕方や論理構成が分かっていないと、限られた制限時間の中でそれなりの語数のエッセイを書くのは極めて難しいものです。英文を書くのに自信がないという方でも英作文の訓練は1-2ヶ月くらいにとどめ、その後、実践的なTOEFL対策に移った方がいいでしょう。
英文を覚えるならサンプルエッセイで使われた文への取り組みをお勧めします。サンプルエッセイはTOEFL Writingで高得点が取れる表現、展開、論理構成に基いて作成されたものであり、サンプルエッセイの黙読、音読、復唱によりそこでの表現に慣れれば、英作文の文よりも本試験で使える可能性が高いといえます。またサンプルエッセイを通してエッセイをどのように展開・構成すべきかも学べます。
(ただサンプルエッセイで使われている表現が自分にとってかなり難しいと感じる場合は、そのサンプルエッセイを活用するのはやめましょう。消化吸収しにくい(自分の英語力のレベルよりもずっと高い)ものは、実力向上に繋がりにくいので)
そして学んだ表現をできるだけ使おうとしながらエッセイを書いてみましょう。
よいエッセイを書けるようになるには、何をどう書くべきかを理解した上で、いくつものエッセイを書き、有効なフィードバックを受けることが大切です。
追記:
ご報告いただいた受講生の方から、記事内容に関して以下の感想をいただきました。
(ご本人のご了承の上、そのまま掲載させていただいています)
葛山先生
ご連絡ありがとうございます。
返信が遅くなりましたが、ブログ拝見致しました。
自分の実感としても、概ね先生が記載していた内容と同じ様な感触です。
英作文の本だけでエッセーが書けるようにはならないので、最初の時期に少しだけやるのが丁度良いのだろうと思います。
論理展開の仕方を練習できないというのもさることながら、これらの本が「受験英語」か「日常会話」のいずれかに特化した本が多いため、TOEFLの点数に結びつきにくいというのもあるように思いました。
やはりTOEFLのスコアを伸ばすには、TOEFL用の対策が必要なのだと思います。
また、先生のブログで触れられていなかった点で一つ補足するとすれば、この取組で一番伸びた英語能力はおそらく「英文処理速度」です。
英作文の本では、「素早くなめらかに英文を作ること」に重点が置かれています。
また、トレーニング法としても「素早く作れるまで同じ文章を何回もやる」といったことが推奨されています。
英作文の本で「主語・動詞・目的語・補語をいかに配置するのか」などの練習を重ねた結果、英文の構造が把握しやすくなり、ReadingやListeningで英文を読み聞きするのがだいぶ楽になったように感じています。
(とはいえ、これらも点数には現れていないのが残念ですが…)
自分の様に日本の英語教育のみを受けてきた人にとって、「英文処理速度」はボトルネックになりやすい能力かと思います。
そこを重点的にトレーニングするという意味では、意味のある取り組みだったのかなと思っています。
長文失礼致しました。
いずれにしましても、当面は力を借りながらTOEFL対策を頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
今回いただいたメールでは「英文処理速度」の向上方法として、英作文の本への取り組みが紹介されていました。
英文処理速度については過去に以下の記事を書いています。
「英文を速く読めるようになるには」また特に「TOEFLにおいてパッセージをある程度のスピードで読めるようになるには」何をしたらよいか?
参考にしてください。
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