以下、過去記事を改訂したものです。
受講生の皆さんからいただく学習相談のメールには、「単語本・単語帳で単語力アップに取り組んでいる」という報告がよくあります。しかし単語とその意味と例文が並んでいるだけの単語集の場合、取り組みが進み、単語の難易度が高くなってくると
「単語が覚えづらく、覚えたものも定着しにくい」
と感じられる人も多いのではないでしょうか。先日もメールでそのようなご相談をいただきました。
知らない単語が単語本のページのほとんどを占めるくらいの難易度の場合、単語を覚えにくかったり、忘れやすかったりします。
例えば、下記のイタリア語27語を明日までに覚えなければならないとしたら、皆さんはどう感じますか。
(ちなみに私はイタリア語がまったく分かりません。下記の単語は今はなくなってしまったあるサイトから拝借しました)
数時間ずっと暗記に努められるのなら可能でしょう。それでも単語リストや単語帳を作成し、何度も繰り返しての確認作業が必要なはず。しかしながらそうやって力技で覚えたとしても、1週間後には覚えたものの大半を忘れているのではないでしょうか。
でもたったの27語でしかありません。27語なら単語集の見開きの2ページに掲載されている語数と同じくらい。
単語本に掲載されている単語のほとんどを知らない場合、記憶が難しかったり、忘れやすかったりするのは当然。上記のイタリア語の暗記と同様、もともと知らない多くの単語とその意味を覚えるのはかなり困難になります。それに対して掲載されている単語の大半を知っている場合、覚えなければならない単語の数は少なく快調に進められます。
ところで皆さん、単語本などで覚えた単語の意味を思い出す際に
「確か見開きの左上のあたりにその単語があった」
「あの単語のすぐ下に載っていたはず」
と感じたことがある方は多いのではないでしょうか。
これは「ある単語とその意味」だけではなく、その単語が掲載されていた位置も同時に記憶していること示します。そしてそのようなキッカケによって思い出すことはよくあります。掲載されていた位置は、記憶をサポートするためのほんのちょっとした要素ではありますが、このような要素が多く存在し、複雑であるほど忘れにくいと言えます。
例えば、スマホ画面に現れる単語の意味を覚えるアプリなどはよくありますが、(他に本などの教材があるわけではなく)画面上に現れる単語を覚えていくのが難しかったり忘れやすかったりするのは、紙の教材であるならば、その単語が掲載されている位置や単語の順番などの記憶をサポートする要素がないからなのかもしれません。
ということで、私としては以下のように考えます。
TOEFLの単語本としては、できれば覚えるべき単語が用いられているパッセージ、そのパッセージを読み上げてくれる音声、記憶をチェックする単語クイズなど、様々な形で記憶をサポートするものがあった方がよい。
単語とその意味と例文が羅列されているような単語本は、単語の難易度のレベルが分けられているので、そのような本を使用する場合、取り組むのは見開きのページに掲載されている単語の半分以上を知っているレベルまでとした方が効率的・効果的に単語力をアップできるでしょう。
意味をほとんど知らない単語ばかりの高いレベルへの取り組みは、過去に「単語帳、単語カード等を使い、記憶の確認を繰り返すことによって力技で単語を覚えた」という成功経験がある方のみ、お勧めします(それでも学習の時間的効率は良くないと考えますが)。「そのような成功経験はない」という方は、問題集やパッセージ付きの単語集への取り組みを通して単語力を向上させた方が失敗を避けられます。
また、新たに覚えるべき単語「以外の英文」に繰り返し触れることも大切です。
例えば700語のパッセージの中に、意味を覚えたい単語が10語あったとしましょう。もちろんこの10語の意味を確実に覚えれば、単語力は上がったと言えます。しかし10語の意味をチェックするために、すでに意味を知っている690語の英文を読むと、単語や表現を理解するスピードが上がったり、少し難しめの文法表現に慣れたりすることができます(スポーツにおいても動きを定着させる反復練習は大切ですね)。
TOEFLで高得点を取るには、高い単語力が求められます。しかし高い単語力さえあれば、TOEFLで高得点が取れる訳ではありません。
特にReadingで20未満のスコアの人がReadingのスコアアップのために、単語とその意味が羅列されている単語本「だけ」に取り組んでも、大した効果は望めません。
なぜなら足りないのは単語力だけではないから。
「単語とその意味が羅列されている単語本への取り組みによって、Readingがスコアアップし、満点近くを安定してして取れるようになった」
という方は、Readingセクションで満点近くを取るために必要な単語力は不足していたものの、それ以外の力、例えば英文処理速度、背景知識、文法力、選択肢を分析する力等は満点近くを取るのに十分であったと考えます。TOEFL対策を始めたばかりで慣れない部分が多いものの、TOEFL対策を始める前に長い間、英字新聞や英文の雑誌を読み続け、基盤としての英語力は極めて高かったのかもしれません。
獲得を希望するスコアと比べ、現在のReadingのスコアはずっと低いという方は、単語力アップだけで目標スコアが取れるとは考えないようにしましょう。
とは言っても、Readingの大幅スコアアップには単語力の向上が欠かせません。パッセージがついている単語集ならば、単語力だけではなく、英文処理速度や背景知識、文法力を高めることもできます。問題集の問題パッセージから単語を覚えていけば、問題への取り組みを通して解答力や論理力も磨くことができます。
単語力アップに取り組む際は、一石二鳥、一石三鳥を狙うことをお勧めします。
葛山さま
はじめまして、yasutakeと申します。
私は葛山先生の授業をとったこともなく、ほんの4ヶ月ぐらい前に偶然このサイトをみつけて以来、貴重な情報源として利用させていただいたものです。
このたび、1月30日に受けたテスト結果が判明しまして、ぶしつけながらお礼のメールをさせていただく次第です。突然の無礼ご容赦ください。
結果は以下の通りでした
R26 L23 S17 W25 T91
点数自体は目標からはまだまだなのですが、初めて受けた結果として、満足の結果でした。
地方在住(ど田舎)、海外旅行経験なし、英語は大学受験(地方国立大学)の時勉強したのみ、仕事が不規則(看護士)、金銭余裕もなし、そんな私が留学を心に決めたのが4ヶ月前。時間と金銭的な制約で非常に苦しい時間を過ごしていますが、このサイトはまた留学へのモチベーションを高める上で、とても役立ってます。私は上級MBAを目指す訳ではありませんがここにきて、いろいろな方のコメントや先生の様々な情報をみると、スコアへの意識が高められます。とてもいい刺激になります。
また、肝心の学習面でも単語の重要さや、リスニングへの意識の強化など、このサイトから学びました。金銭的な制約と不規則な仕事に起因する時間的な余裕のなさからyoutubeとpodcast、海外のwebサイトと数冊の単語帳、勉強時間のほとんどはシャドーイングという変則的な勉強法でしたが、それでも効率的なスコアアップの情報をすべてこのサイトを通じて確認したうえでの方法だったので、無駄なく勉強できたと考えています。
満足いく結果が出るまで、まだ受け続けますので、今後もこのサイトにもお世話になるかと思います。
次回はテスト4月です。葛山様もお体、ご自愛ください。
ありがとうございます。よろしくお願いします。
yasutakeさん
ブログに書いてきたことがyasutakeさんのような方のお役に立てているのなら嬉しい限りです。
初めてで91は非常に高いスコアですし、今後も自信を持って取り組み続けて下さい。
yasutakeさんの真剣な取り組みは、このブログを読んでいる多くの方へよい刺激になるはずです。
わざわざ時間を取ってご報告いただき、感謝申し上げます。
Katsurayama